漫画「ブラックジャック」。もぐりの名医の人間愛あふれるドラマです。
その中の「おばあちゃん」の回に、こんなシーンが出てきます。
ある男の話。その男の母親は、とてもケチ。
いつも倹約ばかりしていて、あまりに行き過ぎていて、ちょっと疎ましがられている。金の亡者じゃないのかと。
そんな母親が脳溢血で倒れました。9割がた、助かる見込はありません。
ブラックジャックは男に聞きます。「助かったら、3,000万円払えますか?」
もちろん、払える金額ではない。ふっかけられて、おどろいて答えた息子のセリフ。さて、彼は、何て言ったでしょう。
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●答え
「い、いいですとも! 一生かかっても、どんなことをしても払います! きっと払いますとも!」
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ブラックジャックは、言います。
「それを聞きたかった」
この作品に登場するおばあちゃんは、すぐにお小遣いを息子や嫁にせびる、がめつくてケチな人物として描かれています。
だから、息子や嫁と衝突する。
でも、ある時、息子は疑問に思うんです。おばあちゃんはあまりお金はいらないはずなのに、どうしてあんなにお金を欲しがるのだろう?
実は、若い頃、赤ん坊だった息子の難病を手術で治療した。
その借金1200万円を、こつこつと返していたのです。
そして、完済したその日、脳溢血で倒れてしまった。そこで、冒頭の場面となるのです。
ブラックジャックは、高値をふっかけるダークな医者と思っている人もいるのですが、実は違う。
こんな感じで、いつも、その人の「決意に値段を」つけて試しているんですね。
(寺沢俊哉/講師のネタ帳365より転載)