「地球の裏側で起きている事件の被害者の気持ちを想像できる」ことが文芸作品をつくる上で大切である。
テレビ番組に出演していた湊かなえさんを見ながら、その言葉を思い出した。ちなみに、湊かなえさんは、ミステリー作家として20作品以上を執筆しており、2010年松たか子さん主演の「告白」が有名である。
テレビでの会話の中で印象的だったことは、ミステリー小説を書くときの過程。ちらしの裏面にミステリーの関わる単語を書き続ける。そして、どの単語が目に留まるかと考える。例えば「復讐」という言葉であれば、「誰が」「誰に」「何のために」と深めていく。その過程で、「何をされたら一番ダメージを受けるか、傷つくか」を考えていくのだそうだ。それはまるで、湖に投げた小石が波紋を描いてような瞬間であるという。
緻密な構成の支えとして、徹底した登場人物の性格付けを心がけており、「履歴が決まれば人物が動いてくれる」として執筆前にはどんな脇役でも履歴書を作っている」という。
まさに、その過程が小説に深みとリアリティを持たせる作業なのかも知れない。一般人が想像で終わらせてしまうが、そこに証拠・根拠、証言、形跡などをストーリーとして、アウトプットすることで付加価値が生まれるということだろう。
このような作品をつくる過程だけでなく、私たちは相手の気持ちを想像して良い人間関係をつくるきっかけにしたり、仕事で喜ばれるサービスをイメージすることで、成果にも貢献できる。私にできることといえば、2歩先、3歩先を想像して、小さな準備と改善を繰り返していく。それが想像力、妄想力の活かし方ではないかと思う。