先日、ある方から勉強会の資料とノートを借りました。
お借りしたノートに目を通しながら、ある言葉がこころに染みました。それは神谷美恵子さんの「おおきな愛」という詩。全文を紹介します。
大きな愛
神谷 美恵子(かみや みえこ)
生きがいということばは、日本語だけにあるらしい。
こういうことばがあるということは、日本人の心の生活のなかで、生きる目的や意味や価値が、問題にされて来たことを示すものであろう。
たとえそれがある深い反省や、思索をこめて用いられて来たのではないにせよ、日本人がただ漫然と、生の流れに流されて来たのではないことが、うかがえる。
仕事というものは、嫌というほどこちらの弱点を、あばき出してくれる。
死に直面した人の心を、一番苦しめるものの一つは、「果たして自分の人生に意味があったか」ということ。
わざわざ研究などしなくても、はじめからいえることは、人間がいきいきと生きて行くために、生きがいほど必要なものはない、という事実である。
それゆえに人間から生きがいを奪うほど残酷なことはなく、人間に生きがいをあたえるほど、大きな愛はない。
(著書紹介)
「神谷美恵子」は、岡山県出身の医師・作家。 ハンセン病患者の治療に尽力したことで知られる女性精神科医であり、 哲学書の翻訳をはじめ、自身の著書でも広く知られている人物。 特に1966年に発表した「生きがいについて」は現在まで読み継がれている名著としても有名であり、 「戦時中の東大病院精神科を支えた3人の医師の内の一人」「戦後にGHQと文部省の折衝を一手に引き受けていた」「美智子皇后の相談役」などの逸話でも知られている。 主な著書に「島の精神医療について」「遍歴」「日記・書簡集」「存在の重み」「精神医学研究」「旅の手帖より」「こころの旅 付・本との出会い」「ヴァジニア・ウルフ研究」「生きがいについて」「人間をみつめて 付・ケベースの絵馬」など、 主な訳書に「ハリール・ジブラーンの詩/ハリール・ジブラーン」「精神疾患と心理学/ミシェル・フーコー」「臨床医学の誕生/ミシェル・フーコー」「ある作家の日記/ヴァージニア・ウルフ」「自省録/マルクス・アウレーリアス」「医学的心理学史/グレゴリ・ジルボーグ」などがある。1914-1979